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せっかく赤くなってきたのに、ヘタの周りだけ緑色…それ、病気ではないかもしれません
収穫したトマトのヘタ周りだけ緑色が残ってしまうその症状は、多くの場合「病気」ではなく、生理障害の一種です。専門的には「グリーンバック果(着色不良果)」と呼ばれています。農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)による高温障害の研究報告でも、高温が着色に影響を与えることが指摘されている、れっきとした生理現象です。
家庭菜園でトマトやミニトマトを育てていて、こんな経験はありませんか。「実がだいぶ赤くなってきた!」と思って収穫してみたら、ヘタのまわりや肩の部分だけ緑色や黄色っぽいまま残っていた——かじってみると、その部分だけ妙に固く感じられた、という方もいらっしゃるかもしれません。「病気になってしまったのだろうか」「育て方が悪かったのだろうか」と、不安になってしまいますよね。
この記事では、そうした症状がなぜ起こるのか、その原因と対策を私なりに整理してご紹介します。大玉トマトよりも、ミニトマト・ミディトマトで起こりやすいことが知られています。
「着色不良」には、実は2つのタイプがある
着色不良には、実は原因の異なる2つのタイプがあります。まずどちらに当てはまるかを見分けることが大切です。
一口に「トマトが赤くならない」と言っても、原因によって症状の出方が違います。
- 実全体がまんべんなく色づいていない(色づくまでの日数が足りていないタイプ)
- 肩の部分だけ緑色や黄色が残り、日陰側は赤いタイプ(これがグリーンバック果です)
ご自身のトマトは、どちらのタイプに近いでしょうか。この見分け方を知っておくだけで、いま実に何が起きているのか、かなりはっきり分かるようになります。
なぜ、肩の部分だけ緑が残るのでしょうか
グリーンバック果には、大きく分けて3つの原因が関係していると言われています。
- 育てている品種の性質
- 直射日光や高温といった環境
- 肥料や水やりといった栽培管理
「うちのトマトはどれに当てはまるのだろう?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
ここから先の部分では、それぞれの原因が起こる仕組みと、今日から実践できる具体的な対策、そしてすぐに使える実践チェックリストを、順を追ってくわしく解説していきます。
そもそも、なぜ肩の部分だけ緑色が残るのでしょうか
直接の原因は、実の温度が上がりすぎることで、赤色の色素が作られにくくなることにあります。
トマトの実が赤くなるのは、実の中で「赤色の色素(専門的にはリコペンといいます)」が作られ、もともとあった「緑色の色素(クロロフィル)」が分解されていくからです。
ところがこの赤色の色素は、実の温度がだいたい32℃を超えるようなところでは作られにくくなることが分かっています(逆に12℃以下でも作られにくくなります)。適温はおよそ20〜25℃です。
厄介なのは、気温がそれほど高くなくても(たとえば28℃くらいでも)、直射日光が当たっている実の表面温度は35℃前後まで上がってしまうことです。特に日光が当たりやすい肩の部分は、実の中でもいちばん高温になりやすい場所です。そのため、そこだけ赤色の色素が作られず、緑色が残ってしまう——これがグリーンバック果の正体です。
この仕組みは、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)が発表した高温障害に関する研究報告でも指摘されています。高温によって着果や着色に影響が出ることは、公的な研究機関のレベルでも確認されている現象なのです。
さらに、遺伝子レベルでの裏付けも報告されています。いま出回っているトマト品種の多くは、「ユニフォームリペニング」と呼ばれる性質を持つよう改良されています。これは、熟す前の実全体を均一な薄緑色にし、熟したときにムラなく赤くなるようにする性質です。海外の研究チームが2012年に学術誌へ発表した研究では、この性質に関わる遺伝子(SlGLK2という名前です)が、実の中の葉緑素(緑色の色素)の分布をコントロールしていることが明らかにされました。この遺伝子のおかげで見た目の均一さは向上した一方、高温などのストレスがかかると、肩の部分の色づきだけが乱れやすいという弱点も、あわせて指摘されています。「品種そのものにも、着色不良が起きやすい・起きにくいの違いがある」という点は、次の章でもう少し詳しくご紹介します。
「積算温度不足型」との見分け方を、もう少し詳しく
無料部分でも触れましたが、トマトの着色不良には「積算温度不足型」と「高温型(グリーンバック果)」の2つのタイプがあります。この違いをきちんと見分けられると、間違った対策をしてしまうリスクを減らせます。
積算温度不足型は、開花から実が熟すまでに必要な温度の積み重ね(目安として1,100〜1,200℃程度)がまだ足りていない状態です。この目安は、栽培診断を専門に扱うメディアの解説でも紹介されている数値です。この場合は、実全体がまんべんなく薄い色のままで、ヘタの付け根まで均一に緑〜黄緑が残ります。気温が低い時期の収穫や、日照不足の環境で起こりやすい傾向があります。
一方、グリーンバック果(高温型)は、肩の部分だけ色が薄く、下側や日陰になっている部分はすでに赤くなっている、という「不均一さ」が特徴です。同じ果房の中でも、日光の当たり方によって色づき方に差が出ているようであれば、高温型の可能性が高いといえます。
ご自身のトマトを見るときは、「果実全体が均一に薄いか」「特定の部分だけ色が薄いか」を、まずチェックしてみてはいかがでしょうか。
原因1:品種による起きやすさの違い
同じ育て方をしていても、品種によってグリーンバック果の出やすさは変わります。いま売られているトマトの多くは、熟す前の実が全体的に薄い緑色になり、熟すときれいに均一な赤になるよう、長年の品種改良で選ばれてきた性質を持っています。
この性質のおかげで見た目の均一さは良くなったのですが、その一方で、高温などの環境ストレスがかかったときに、実の肩の部分だけ着色不良を起こしやすいという弱点があることも指摘されています。
近年は、高温期でも着果が安定し、裂果や尻腐れ果などの生理障害が出にくいことを訴求した品種も種苗会社から発売されています。たとえば「桃太郎みなみ」は、種苗会社やJA系の専門メディアが、高温期の着果安定・裂果や尻腐れ果の少なさを紹介している夏秋栽培向けの品種です。こうした品種がグリーンバック果を完全に防ぐわけではありませんが、もし例年悩まされているようでしたら、次のシーズンの品種選びの際に、カタログで「高温期・夏秋栽培向け」と表示されている品種を候補にしてみてはいかがでしょうか。
原因2:環境要因(直射日光・高温)
もっとも大きな原因になりやすいのが、実に直射日光が当たり続けることによる高温です。次のような状態に心当たりはないでしょうか。
- 真夏の直射日光下では、実の表面温度が40℃近くまで上がることもあります
- 葉かきや芽かきをしすぎて、実に影を作る葉が少なくなっているケースがあります
- 風通しを意識しすぎて、実がむき出しになっているケースもあります
「葉が茂っていると病気になりやすいから」と葉かきをがんばりすぎると、かえって実が直射日光にさらされ、グリーンバック果を招いてしまうことがあります。葉かきは「病気予防」と「実を守る日陰づくり」のバランスを取る作業だと考えていただくと、判断がしやすくなるはずです。
原因3:肥料・水管理
窒素の与えすぎとカリウム不足、そして水切れも、着色を妨げる要因になります。
- 窒素過多:元肥や追肥の窒素成分が多すぎると、葉や茎ばかりが茂り(いわゆる「つるぼけ」)、実の成熟に回るはずの養分が不足しがちになります。
- カリウム不足:カリウムは、光合成で作られた糖を実まで運び、実の肥大や着色を助ける働きがあります。不足すると着色が遅れたり、不完全になったりすると言われています。また、カリウムが適切に供給されていると、窒素の過剰吸収を防ぐ効果も期待できるとされています。
- 水切れ:高温期に水やりが不足すると、葉から蒸発する水分の量が根から吸い上げる水分の量を上回り、実の生育バランスが崩れる一因になるとの指摘もあります。
具体的な対策
対策のポイントは、「日光を当てすぎない」「カリウムを意識する」「水を切らさない」「葉かきをしすぎない」の4点です。これらを押さえることで、発生を減らしやすくなります。それぞれ、もう少し具体的に見ていきましょう。
1. 実に直射日光を当てすぎない(整枝・葉かき)
整枝・誘引を工夫して、実がある程度葉の陰に入るようにしましょう。ただし葉を茂らせすぎると病気のリスクが上がるため、目安として葉かきは「1日に3枚程度」にとどめ、様子を見ながら少しずつ調整することをおすすめします。摘葉する葉は、下から古い葉・黄色くなった葉を優先し、果実のすぐ上にある元気な葉はできるだけ残すようにすると、実に自然な日陰ができやすくなります。
2. 遮光ネットや不織布を使う
色づき始めた実に直射日光が強く当たる場合は、遮光ネットや不織布で果房を覆うのも効果的です。遮光率の目安としては、開閉して使う場合は50%程度、常時かけっぱなしにする場合は30%程度が使いやすいとされています。熊本県の農業関連機関が行った遮光試験でも、遮光によって黄変果(着色不良)の発生を抑える効果が確認されており、直射日光対策としての遮光ネットには一定の裏付けがあるといえます。ただし、遮光しすぎると花付きや実付きに影響することもあるため、一日中張りっぱなしにするのではなく、日差しが強い時間帯だけ使うのがポイントです。梅雨明け後、直射日光が強くなる時期から使い始めると取り入れやすいはずです。
3. 追肥でカリウムを意識する
開花・結実期以降は、窒素を控えめにしつつ、カリウムを多く含む肥料(硫酸カリウムなど)を追肥に取り入れてみましょう。タイミングの目安は、第1果房の実がピンポン玉くらいの大きさになった頃から始め、その後は3段目・5段目・7段目というように奇数段の花が咲いたタイミングを基準に、2週間おきに追肥する方法が紹介されています。分量は、速効性の化成肥料であれば一株あたり一握り(10g前後)を目安に、株元から少し離れた場所に施すとよいとされています。このタイミングと分量は、タキイ種苗が公開している栽培情報でも紹介されている目安です。
4. 水切れを起こさない
水管理の頻度は、栽培方法によって目安が変わります。プランター栽培の場合は乾燥しやすいため、夏場は朝・夕方の1日2回、たっぷり水を与えるのが目安です。地植えの場合は、雨が降っていれば基本的に十分なことが多く、晴天が続くようであれば6〜7日に1回程度を目安にしてください。実がなり始めてからは、プランター・地植えのどちらでも2〜3日に1回は土の状態を確認する習慣をつけると、水切れによる着色不良を防ぎやすくなります。これらの頻度は、園芸専門メディアでも紹介されている目安です。土に割り箸を挿してみて、上から10cmほどが乾いているようなら、水やりのタイミングと考えてよいでしょう。
5. 次のシーズンは品種選びも検討する
毎年グリーンバック果に悩まされているようでしたら、高温期に強いとされる品種への切り替えも選択肢のひとつです。種苗会社のカタログやタネ袋の説明で「夏秋栽培向け」「高温期の着果性にすぐれる」といった記載があるかを、購入前にチェックしてみてはいかがでしょうか。
6. すでに緑色が残ってしまった実について
残念ながら、すでにグリーンバック果になってしまった実の色を、あとから赤く戻す方法は今のところありません。対策はすべて「これから熟していく実」への予防が中心になる、という点は知っておいていただければと思います。
他の生理障害との違い(尻腐れ果との比較)
トマトを育てていると、グリーンバック果以外にも気になる症状に出会うことがあります。その代表例が「尻腐れ果」です。せっかくなので、この機会に違いを整理しておきましょう。
尻腐れ果は、実のお尻の部分(花が咲いていた側の先端)が、茶色から黒っぽく変色してしまう生理障害です。一般的にはカルシウム不足が関係していると言われており、カルシウムだけでなくホウ素の不足も関わっている場合があるとされています。園芸専門メディアの解説でも、この2つの生理障害は原因が異なるものとして整理されています。発生する場所も原因もグリーンバック果とは異なり、次のように整理できます。
- グリーンバック果:ヘタ側(肩の部分)が緑色や黄色のまま残る。主な原因は高温・直射日光・窒素過多・カリ不足・水切れ
- 尻腐れ果:お尻側(花が咲いていた先端)が茶色〜黒く変色する。主な原因はカルシウム・ホウ素の不足
もしお尻の部分に変色が見られる場合は、この記事で紹介した対策に加えて、カルシウムを含む肥料や、水切れを起こさない管理も意識してみるとよいかもしれません。
病気や害虫の被害と勘違いしやすいポイント
グリーンバック果は病気ではありません。緑色が残った部分を見て、「病気にかかったのでは」「虫にやられたのでは」と心配になる方も多いのですが、グリーンバック果はウイルスや細菌による病気ではなく、あくまで温度・光・栄養バランスによって起こる生理現象です。
見分け方として、次のような点を確認してみてください。
- 斑点状ではなく、肩の部分全体が面としてぼんやり緑色になっている
- 株の他の部分(葉や茎)に、しおれ・変色・虫食いなどの異常が見られない
- 同じ株の実でも、日光が当たりにくい下側や陰になっている実は正常に色づいている
これらに当てはまる場合は、病害虫ではなくグリーンバック果である可能性が高いといえます。むやみに農薬を使う前に、まずは今回ご紹介した「直射日光」「肥料」「水管理」の3点を見直してみてはいかがでしょうか。
すでに発生してしまった実は、どう活用すればよいでしょうか
対策をしていても、その年に色づき始めていた実がグリーンバック果になってしまうことはあります。「見た目が悪いから捨てるしかない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、グリーンバック果は味そのものが大きく損なわれるわけではないとされていますので、次のような活用方法も考えられます。
- 家庭内での自家消費:トマトソースやスープなど加熱調理に使えば、固さや見た目のムラが気になりにくくなります。
- 直売所での「わけあり」表示での販売:直売所によっては「訳あり」「ご家庭用」として販売できることがあります。取り扱いルールは直売所ごとに異なるため、事前の確認をおすすめします。
- 加工用途としての活用:ケチャップやジュース、ピューレなど、色や形が仕上がりに影響しにくい加工品の原料として使う方法もあります。個人での加工が難しい場合は、地域の加工業者にOEM(委託製造)で相談できるケースもあるようです。
産直・地域産品を扱う専門メディアでも、規格外トマトを直売所で販売したり、加工品として活用したりする実例が紹介されています。「規格外だから廃棄するしかない」と思い込まず、こうした選択肢も一度検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q. 大玉トマトでもグリーンバック果は起こりますか?
起こることはありますが、この記事でご紹介した通り、大玉トマトよりもミニトマト・ミディトマトのほうが発生しやすいと言われています。
Q. プランター栽培でも対策は同じですか?
基本的な原因(高温・直射日光・肥料・水管理)は共通していますが、プランターは地植えより土の量が少なく乾燥しやすいため、特に水切れへの注意を強めにしていただくことをおすすめします。
Q. 遮光ネットを使うと収穫量は減りませんか?
遮光しすぎると花付きや実付きに影響する可能性があるとされているため、一日中ではなく、日差しの強い時間帯だけ使うようにすると、収量への影響を抑えながら高温対策ができると考えられます。
Q. 来年も同じ品種を育てて大丈夫でしょうか?
品種そのものが原因のすべてではありませんので、今年の栽培環境(日当たり・葉かきの頻度・施肥)を見直すことで改善が見込めるケースも多くあります。それでも毎年悩まされているようであれば、品種の見直しも選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
今日からできる実践チェックリスト
日当たり・整枝
- [ ] 色づき始めた実に、直射日光が長時間当たっていないか確認する
- [ ] 葉かきをしすぎていないか(1日3枚程度を目安に)見直す
- [ ] 日差しの強い時間帯だけ、遮光ネットや不織布で果房を覆う
肥料・水管理
- [ ] 元肥・追肥の窒素量が多すぎないか確認する
- [ ] 第1果房がピンポン玉くらいになったら、カリウム(硫酸カリウムなど)の追肥を始める
- [ ] プランターは朝夕2回、地植えは6〜7日に1回を目安に水切れをチェックする
品種・来シーズンに向けて
- [ ] 例年グリーンバック果が多いなら、高温期向けの品種も選択肢に入れる
- [ ] お尻側の変色(尻腐れ果)がないか、あわせて確認する
参考にした情報
この記事は、私が個人的に調べた印象だけでなく、次のような公的機関・専門機関の情報もあわせて参考にまとめています。
- タキイ種苗、サカタのタネなど種苗会社が公開している生理障害・栽培に関する公式情報
- 農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)による高温障害に関する研究報告
- 海外の学術誌に掲載された、トマトの着色に関わる遺伝子(ユニフォームリペニング/SlGLK2)についての研究
- 熊本県の農業関連機関による、遮光がトマトの着色に与える効果の試験データ
- 農畜産業振興機構(alic)による、施設栽培トマトの高温障害対策に関する調査報告
- 園芸専門メディア・産直専門メディアによる、水やりや規格外品活用に関する実践情報
なお、個人ブログなど経験則に基づく情報については、参考程度にとどめ、内容の裏付けが取れる範囲でご紹介しています。
まとめ
結論として、グリーンバック果(着色不良果)は病気ではなく、品種・環境(直射日光や高温)・肥料や水管理という3つの要因が重なって起こる生理障害です。原因が分かれば、対策は決して難しいものではありません。
「実に直射日光を当てすぎない」「カリウムを意識した施肥をする」「水を切らさない」「葉かきをしすぎない」——私からは、まずこの4つを意識していただくことをおすすめします。すべてを一度に完璧にこなす必要はありません。できることから、今日の栽培管理に少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。
